ハイブリッドクラウドやマルチクラウドを利用する企業が増え、運用管理の複雑化が課題になっている。ガバナンスの不全やサービスレベルの低下などを引き起こさないために有効なソリューションを運用の専門家に聞いた。
企業のクラウド活用が定着し、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの利用が一般的になった。そこで課題となっているのが運用・管理の複雑化だ。ガバナンスの不全やサービスレベルの低下などさまざまなトラブルを回避するためには、複数のクラウドサービスやハードウェアを一元管理して効率的に運用できる統合運用管理プラットフォームが有効だ。伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)に、同社が統合運用管理プラットフォームを導入した際の決め手や実感した効果、運用管理の統合を推進する意義について聞いた。
CTCはユーザー企業のシステムの運用支援やIaaS(Infrastructure as a Service)の運営など、多岐にわたるサービスを提供している。運用する環境はパブリッククラウドや自社のデータセンター、顧客のオンプレミスサーバなどさまざまで、運用負荷が増加する傾向にあった。
CTCの吉田丈成氏(エントラステッドクラウド技術本部 DCエンゲージメント運営部 リードスペシャリスト)はこう振り返る。
「サービスや環境によって運用管理の手法が異なるため、障害発生時における上長報告の方法や判断基準などが、サービス間で統一されていませんでした」
オンプレミスとクラウドを含め、システム全体で一貫した運用管理体制を構築できなければ、サービスレベルを維持するのは難しい。
「オンプレミスで運用する機器やアプリケーション、そしてクラウドサービスを一括して運用管理することで、統一された品質のサービスを提供したいと考えました」(吉田氏)
そこでCTCが導入したのが、米Hewlett Packard Enterprise(以下、HPE)が提供する「OpsRamp」だ。OpsRampは統合運用管理ソリューションとして市場をけん引する存在で、HPEが2023年にOpsRamp社を買収して、オンプレミスインフラを従量課金型で提供するサービス群「HPE GreenLake」のポートフォリオに組み込んだ。監視システムやチケット管理、アカウント管理、パッチ適用など、OpsRampはさまざまな機能を提供する。AI技術も搭載しており、AIによって運用の効率化や自動化を図るAIOpsを実現する。
CTCではOpsRampの導入によって2つの成功事例が生まれた。
CTCは、IaaS「TechnoCUVIC」や、SAPのERP製品の稼働に特化した基盤「CUVICmc2」をはじめとする「CUVICシリーズ」を展開している。OpsRampの導入前は、これらサービスの稼働状況は担当者にしか分からず、マネジメント層が状況を把握しにくいという課題があった。
そこでOpsRampを活用して、CUVICシリーズの基盤の状態を一括で表示する「サービスダッシュボード」と、システムの階層構造やシステムとサービスの依存関係を示すことで障害の影響範囲を可視化する「サービスマップ」を実装した。
CUVICシリーズの運用全般を担当する近藤恵一氏(エントラステッドクラウド技術本部 オープンハイブリッド運営部 主任)はその成果を次のように話す。
「サービスダッシュボードとサービスマップは、最初は当社の現場運用担当が状況把握するために作成しましたが、経営層向けの情報提供手段としても有用と気づき、活用範囲を拡げました。経営層が知りたいのは機器の詳細な状態ではなくサービスが正常に稼働しているかどうかなので、その点が直感的に分かるように、表示内容をカスタマイズしました。冗長構成の片側がダウンした場合、機器レベルでは深刻なトラブルが発生していると言えますが、予備系に切り替わってサービスが継続していれば、『ビジネス影響は無い』と判断できます」
機器レベルの稼働状況を把握するのは運用管理ツールの基本機能だ。障害発生時にその影響がどこまで及ぶのか、どのサービスに影響が出るのかを瞬時に判断することは、構成をコンポーネントレベルで熟知しているサービス担当者以外には難しい。その結果、属人的な運用・管理体制になることも多い。OpsRampは、あらかじめビューを作成しておくことで担当者の知識やスキルに依存せずに障害発生時の対応を標準化する。
「かつては障害発生の際、担当者は障害に対応しつつ上司に報告もしなければならないというマルチタスク状態に置かれていました。障害が発生するとどのサービスにどの程度影響が及ぶのかという情報共有の自動化によって、運用の高度化につながっていると実感しています」(近藤氏)
運用の自動化を支援する機能も充実しており、アラートの発報をトリガーとしたワークフローを組んで自動実行できる。こうした機能は多くのツールにもあるが、ツールごとに自動化機能を実装するとサイロ化を助長する可能性がある。CTCは、今まで別々のツールで行っていた自動化処理をOpsRampへ統合。自動化のノウハウを一元化した。特定の障害が発生した際の一次対応をOpsRampで自動化することで、年間で約290時間の作業量を削減できたという。
もう一つの成功事例がCTCのサービス提供基盤の運用効率化だ。サービス提供基盤とは、TechnoCUVICやCUVICmc2などのサービスで共通化している顧客管理データベース、障害やサービスリクエストのチケット管理システム、顧客向けポータルサイトなどを含む基盤を指す。
サービス提供基盤を構成するハードウェアやクラウドサービスは多岐にわたる。機器などに障害が発生するとその機器やサービスからアラートが一斉に上がるため、担当者は膨大な量のアラートを整理して根本原因を追及するのに多大な労力を費やしていた。
運用支援サービスの企画を担当する太田和孝氏(エントラステッドクラウド技術本部 システムマネージド運営部 主任)は、OpsRampの効果を次のように話す。
「OpsRampは、同じ内容のアラートを自動的にインシデントへ集約して障害発生箇所を分かりやすく表示します。従来は障害発生から対応完了まで平均9〜10時間を要していたのが、OpsRamp導入後は1時間以内に短縮できました」(太田氏)
障害対応にかかる時間の多くは初動対応が占めるため、初動対応の短縮が障害対応全体の時間削減につながった。障害対応の実績を可視化することで平均初動時間や平均復旧時間などのKPI(重要業績評価指標)が定まり、担当者間でインシデント対応の共通目標を持てるようにもなった。
「アラート集約による情報整理作業の軽減や、障害時にまずはOpsRampを見ればよい、という作業のシンプル化により、障害対応にかかる時間が短縮されただけでなく、運用担当者の精神的な負担も和らぎました」(太田氏)
運用管理を統合するには、現場の担当者が新しいソリューションや体制を受け入れなければ実現には至らない。担当者がツールを使いこなすノウハウも重要であることから乗り換えが難しく、結果としてシステムごとに異なる運用管理ソリューションを利用することになりがちだ。
CTCも既存の複数の運用管理ソリューションをOpsRampに統合する過程で乗り換えの難しさに直面した。OpsRampの運用実績を堅実に積み上げ、報告会などを通じて丁寧に乗り換えのメリットを説明することで、適用範囲を拡大したと吉田氏はいう。
こうしたOpsRampの活用経験を踏まえ、CTCはユーザー企業向けにOpsRampを利用する運用支援サービスを開始した。
「OpsRampとCTCの運用支援サービス『CTC Account Managed Service』(CTC-AMS)を組み合わせた『ITシステム運用支援パッケージ』を提供しています。OpsRampの導入支援からダッシュボードやサービスマップなどの設定カスタマイズ、運用の代行まで、お客さまのご要望に柔軟にお応えするパッケージです」と太田氏は説明する。運用管理の効率化に取り組んでノウハウを蓄積してきたCTCからは、ソリューションの運用方法だけでなく体制づくりの支援も得られる。
CTCと密接なパートナーシップを構築してきた日本ヒューレット・パッカード(以下、同社もHPEで総称)の大崎了平氏(パートナー・アライアンス営業統括本部 第二営業本部 第一営業部)は、OpsRampのユーザーでもあるCTCについてこう話す。
「CTC様はハイブリッドクラウドやマルチクラウドにおける運用課題の解決にOpsRampが有効だということにいち早く注目していました。自社利用を通じて機能に精通し、ユーザー企業向けのビジネス展開もしていることを心強く感じています。多くのユーザー企業の課題解決に貢献できるOpsRampが、HPEとCTC様との協業強化につながると期待しています」
CTCはHPEのトップパートナーとして、2024 HPE Global Partner Awardsで「HPE GreenLake Global Partner of the Year 2024」と「Japan HPE Solution Provider of the Year 2024」を受賞した。
「CTC様はOpsRampやマネージドサービスの評価に加え、グローバルでトップレベルの『HPE GreenLake』の契約実績、国内でもトップレベルの販売実績が評価されてダブル受賞されました。このような実績を作っていただいているCTC様がOpsRampに精通し、ビジネス展開いただけていることが心強いです」(大崎氏)
ハイブリッドクラウド、マルチクラウド運用のカオス状態を解消したい企業は、HPEがその実力を認めるCTCに相談し、OpsRampの活用も含めて検討してはいかがだろうか。
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