なぜ30%も増えたのか? クラウド費用を押し上げる「隠れ要因」とは【調査】CIO Dive

多くの企業でクラウドコストの急増が問題となっているが、クラウド費用の中には実はIT部門が把握できていない「ある項目」があるという。クラウド費用を適正化するために、企業が打つべき「手」とは。

» 2024年11月14日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 ビジネスにおける生成AIやAIの利用が必須となる中で、急増するクラウド費用をいかに適正化すべきか。技術関連の経費管理ソリューションを提供するTangoeのレポートによると、多くの企業でクラウドにかかる費用は過去1年間で平均30%増加している(注1)。

AI活用でクラウド急増するクラウド費用 どう適正化する?

 クラウド費用増加の最大の要因として回答者の半数が挙げたのが、AIアプリケーションや生成AIに関連する支出だ。ただし、AIに関連するものの、IT部門が把握できていない「ある項目」も含まれているという。それは何か。

 同調査では、回答者の約4分の3が、AIブームによってクラウド費用が「手に負えなくなっている」と答えた。Tangoeのクリス・オルトバルズ氏(CPO《最高製品責任者》)は、「クラウドの隠れたコストと予測不能な請求は、生成AIの成長を阻害する潜在的要因になり得る」と述べた。

 ハイパースケーラーが生成AI導入を推し進める中、企業のIT予算はひっ迫している。企業はLLM(大規模言語モデル)を強化するためにハイブリッドクラウド環境の利用を倍増させている。それに伴って急増するクラウド費用をどう抑制すべきだろうか(注2)。

 「AIの運用に必要なものの価格は高騰している。AWS(Amazon Web Services)の一般的な『Amazon EC2』(Amazon Elastic Compute Cloud)ユニットだけでなく、GPUやTPUも稼働している」とオルトバルズ氏は「CIO Dive」に語った。

 回答者の10人中9人以上が、「2023年はAIアプリケーションや自動化ツールの影響でクラウド費用が増加した」と報告している。また、ほぼ同じ割合の回答者が、「ITインフラに加えてAIやその他のソフトウェアサービスもFinOpsのクラウド経費管理に含める必要がある」と述べた。

さらに費用を増大させる「AI搭載のシャドーIT」

 クラウドにかかるコストの最適化を追求する非営利団体FinOps Foundationが2024年2月にサービスベースのアプリケーションやその他のクラウドベースのソフトウェアソリューションを含めるよう実践範囲を拡大したことで、SaaSをFinOpsの管理下に収めようとする傾向が強まっている(注3)。資産管理ソリューションを提供するFlexera Softwareの中間報告によると、約3分の1の企業では、IT資産管理者がFinOpsの取り組みに参加し、ソフトウェア監査コストの増加を抑えるために尽力しているという(注4)。

 「クラウド費用が増加しているのは、自動化ツールやAIを導入したからだ。われわれは独自の社内用GPTを運用しているが、このために通常の費用に加えてプラットフォームを動かすためにパブリッククラウドでコストが発生している。多くの企業が同じような状況にあるだろう」(オルトバルス氏)

 さらに、AIはFinOpsによるコスト最適化の主要なターゲットである、シャドーITのレベルを高めている。

 Tangoeの調査によると、IT部門の監視を逃れているソフトウェア利用がSaaSコストの3分の1以上を占めている。3分の2の企業ではオフィスソフトにおける利用されていないアカウント料金などの無駄な支出が見つかっている。オフィスソフトのカテゴリでは、MicrosoftのようなITベンダーがLLMエージェントやコーディングアシスタント、その他の生成AIツールを統合している(注5)(注6)(注7)。

 この傾向は、シャドーITが予算に与える影響を増幅させる。

 「従量課金制は不正なITの使用を容易に認めてしまう。各部署はクレジットカードで費用を支払うだけで使い始められる」(オルトバルズ氏)

 なお、Tangoeの調査は、Tangoeが市場調査会社のVanson Bourneに依頼し、企業のクラウド費用管理を担当するITおよび財務の専門家500人を対象に実施した。

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