アトラシアンは、AIの利用に関する調査の結果を発表した。AIを効果的に活用している"AIコラボレーター"と、"単純なAIユーザー"の間には、明確な行動の違いがあるという。
アトラシアンは2024年11月25日、ナレッジワーカーを対象に実施した「AIの利用に関する調査」の結果を発表した。それによると、AIと効果的にコラボレーションしている人はそうではない人と比較して「AIを活用して労力に対するROIを2倍にしている」「毎日105分を節約している」「節約した時間を新しいスキルの習得に再投資する可能性が1.5倍高い」「革新的なチームメンバーとして見られる可能性が1.8倍高い」という結果が出た。
AIを効果的に活用している“AIコラボレーター”と、“単純なAIユーザー”なAIユーザーは何が違うのか。アトラシアンによると幾つかの分岐点があるという。
それによると、AIと効果的にコラボレーションしている人はまず質問から始めており、これらの人々は、特定のタスクや課題を定義して明確な目標を設定し、その後AIとパートナーシップを組んでより良い成果を上げていることが分かった。
アトラシアンのTeamwork Labsは、今回の調査に基づいて、AIの仕事への活用度合いに応じて「ステージ0」から「ステージ4」の5段階に分類した。
ステージ0に分類された人はAIをまだ使用しておらず、AIが職場では役に立たないと考えている。ステージ1と2は単純なAIユーザーだ。AIを自動化ツールとして考えており、AIを、自分自身でできる可能性が高いタスクをより速く、より簡単に終わらせるためにのみ使用している。ステージ3と4は戦略的AIコラボレーターだ。クリエイティブなパートナーまたはさまざまな専門スキルを持つチーム全体としてAIにアプローチしている。
アトラシアンでは、これからの仕事の未来は人間とAIのコラボレーションだとしており、今回の調査結果から、最も戦略的なAIコラボレーターには次のような特徴が見られたという。
その特徴とは、「AIを活用して労力に対するROIを2倍にしている」「毎日105分を節約している」「節約した時間を新しいスキルの習得に再投資する可能性が1.5倍高い」「革新的なチームメンバーとして見られる可能性が1.8倍高い」といったものだ。
今回の調査では、AI活用による1日当たりの節約時間は、ステージ1の53分に対して、ステージ4は105分。これは、平均的な就業日の20%以上で、毎週丸1日分に相当する。金額に換算すると、6430万ドルの機会費用に当たる。
単純なAIユーザーと戦略的なAIコラボレーターでは、節約した時間を使って何をするかにも違いがあった。単純なAIユーザーはその余剰時間を管理業務に費やす傾向があるのに対して、戦略的コラボレーターはより深く仕事に取り組む傾向があり、AIの革新性と可能性に活気づけられ、AIが自分たちの創造性と生産性を向上させる新しい方法を発見し続けていた。
アトラシアンは、今回の調査によって、AIをチームの一員として捉えるようになったときに仕事の質が飛躍的に向上するとしている。単純なAIユーザーは仕事を素早くこなすが仕事の質はそれほど変わらないのに対して、戦略的AIコラボレーターは、仕事を素早くこなすだけでなく仕事の質も大幅に向上していた。
この差は、次の点にあると同社は分析している。すなわち、単純なユーザーがAIにさまざまなソースからのデータを収集させる場合はそこで作業が終了し、AIに分析や結論の導出を求めないのに対して、ステージ3のコラボレーターは、AIと協力して仮説を構築し、質問を投げかけ、結果を分析し、洞察を引き出す。さらに、ステージ4になると、AIにさまざまな決定のメリットとデメリットの概要を求めたり、類似した状況からのケーススタディを提示したり、潜在的な予期せぬ結果をリストアップしたりしていた。
アトラシアンでは、リーダーは、AIコラボレーションの取り組みを可視化する必要があるとしている。リーダーが実験と学習の文化を育むことで、従業員は戦略的AIコラボレーターになる可能性が高まり、結果としてより大きな時間の節約とより質の高い成果がもたらされると説明する。同社は、リーダーの支援がなければ、従業員は時代遅れのワークフロー(ステージ0〜2)から抜け出せず、AIが持つ効率性とイノベーションを推進する能力を活用できないと指摘する。
ただし、リーダーシップのサポートは、AIコラボレーション文化を育むための取り組みの半分に過ぎず、AIコラボレーション文化を育むにはチームの努力が必要だ。そのための実践的なステップとして、アトラシアンは次の2つを挙げた。一つはAIの実験を促進するために、全員にAIを日常業務に組み込むよう奨励すること、もう一つはAIコラボレーションに焦点を当てた部門横断的な学習セッションを開催することだ。
なお、今回の調査は、オーストラリア、米国、インド、ドイツ、フランスのナレッジワーカーを対象に実施し、約5000人から有効回答を得た。
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