「生成AI投資はいとも簡単に無駄になる」 AWS、MS、Googleによる怒涛の新製品投入にどう向き合うべきかCIO Dive

AWSやMicrosoft、Googleなどのハイパースケーラーは、AI技術を支えるインフラへの投資をこれまでにない規模で拡大している。しかし、AIの導入にはさまざまな課題が伴うと専門家は指摘する。

» 2024年12月06日 07時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 クラウドコンピューティングとAIに対する需要が高まる中、AWS(Amazon Web Services)はインフラ構築への投資を継続する予定だと、2024年10月31日(現地時間、以下同)にAmazonのアンディ・ジャシー氏(CEO《最高経営責任者》)は2024年第3四半期決算説明会で語った(注1)。

AI製品“飽食の時代”の立ち回り方

 「AWSのAI事業は数十億ドル規模の収益を上げており、前年同期比で3桁の成長率を維持している。これは、AWS立ち上げ当初の成長速度の3倍以上だ。AWSの成長もかなり速かったが、AI事業はそれ以上の成長を遂げている」(ジャシー氏)

 AWSやMicrosoft、Googleは2024年第3四半期もAIへの投資を加速させ、さまざまな新製品を投入しているが、企業はこの動きにどう向き合えばよいのか。

 2024年9月30日までの第3四半期のAWSの売上高は、前年同期比19%増の275億ドルだった。同社は顧客の需要に対応できるAWSのインフラを整えるため、2024年末までに750億ドルの資本支出を実施し、2025年はさらなる増加を見込んでいる。

 AWS、Microsoft、Googleは2024年第3四半期、AIに後押しされて成長した。急増する需要に対応するため、ハイパースケーラー各社はAI技術を支えるインフラへの投資を強化する計画だ。

 「Google Cloud」の収益は「Vertex AI」とクラウドデータベースサービスに対する企業の関心に支えられ、2023年に急成長を遂げた(注2)。Googleは2024年までにインフラ拡大に380億ドルを投じており、これは2023年の第1〜3四半期よりも80%多い。2025年はさらに設備投資が増えるだろうと、経営陣は2024年10月29日の決算説明会で語った。

 一方、Microsoftのクラウド収益は前年同期比22%増と、前年同期の24%増から低下した(注3)。同社のAI事業は2024年第4四半期には年間売上高100億ドルを突破し「同社史上最速でマイルストーンに到達するセグメントとなる見込みだ」と、経営陣は2024年10月30日の決算説明会で述べた。クラウド消費の拡大に対応するため、同社の設備投資とデータセンターに対する支出は今後数四半期で増加する見込みだ。

 AWSのプラットフォームでは、モデルカスタマイズサービス「Amazon Bedrock」をはじめ、AIサービスやツール、モデルが急増している(注4)。

 「顧客はより多くのモデルへのアクセス、プロンプト管理の簡略化、推論コストの最適化など、他にも多くの要望がある。Amazon Bedrockチームは、この実現に向けて懸命に取り組んでいる」(ジャシー氏)

 クラウド部門の収益は、AWSの総収益のほぼ5分の1を占めている。AWSは2024年第3四半期にCapital One FinancialやT-Mobile International、トヨタ自動車など複数の企業と新規契約や拡大契約を締結した。

 「ここ1年でAWSの成長は著しく再加速している」(ジャシー氏)

 企業は、新たなアプリケーションによって自社のサービスやソリューションが進化したり、リスクを軽減するガイドラインを整備できるようになったりすることで恩恵を受けている。しかし、AI導入を主導しペースを決める役割を担う技術リーダーにとって、ベンダーによる技術の宣伝は混乱を招くものでもある(注5)(注6)。

 CIO(最高情報責任者)は、AIの導入に伴ってコストとデータの課題が待ち構えていることを認識しており、技術の利点を過剰に期待することは避けたいと考えている(注7)(注8)。企業はベンダー間の競争に目を奪われず、自社の状況と目標に合った製品導入を進める必要がある(注7)。

 Gartnerのハン・レホン氏(バイスプレジデント・アナリスト兼フェロー)は「『ベンダー間の競争はあなた自身の競争でもあり、最新のAIを導入しなければ他社に後れを取る』と言う人もいるかもしれません。それは真実ではありません」と指摘する。同社のメアリー・メサグリオ氏(ディスティングイッシュト・バイスプレジデント・アナリスト)も「生成AIの分野では、いとも簡単に投資が無駄になってしまう」と述べた。

 ジャシー氏は2024年10月31日、AI導入のコストが増大していることを認めた。

 「顧客は導入の規模が大きくなるにつれ、AIのコストが急激に高まることをじきに理解するだろう」(ジャシー氏)

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