AIの自社運用に必要なGPUとソフトウェアとは 押さえたい必須知識と最新トレンドエヌビディア、NECに聞くAI活用の道

AIのビジネス活用に取り組むとき、直面するのが「AIのインフラ」だ。セキュリティやガバナンス、データ活用などを考えると自社運用が有効だが、その体制を整えるのは一筋縄ではいかない。AIを自社運用するポイントをエヌビディアとNECに聞いた。

PR/ITmedia
» 2024年12月09日 10時00分 公開
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 DX推進が叫ばれる中で、AIの導入やデータの活用、分析に乗り出す企業が増えている。「生成AI活用の年」といわれる2024年は、自社のIT環境で独自のAIモデルを開発、運用することがトレンドの一つだ。しかし、ユーザー企業だけでAIソリューションの選定から運用まで完結させるのは難しい。

 この課題を解決すべくタッグを組んだのが、AI時代をリードするエヌビディアと日本企業のビジネスを深く理解しているNECだ。長年AI活用の最前線に立ってきた両社の担当者に、AI基盤やデータ分析基盤の構築と運用を成功に導くポイントを聞いた。

オンプレミスでAI活用 GPU搭載サーバに脚光

photo NECの“Mr.GPU”こと荒井拡貴氏

 「それまでは『AIで何かできればいいね』くらいの状況でしたが、ChatGPTをはじめとする生成AIが登場したことで多くの企業が『実際に使ってみようか』という姿勢に変わり、AI導入や活用の検討に乗り出しました」――こう話すのはNECでGPUソリューション開発チームを率いる「NECの“Mr.GPU”」こと荒井拡貴氏(コンピュート統括部・アクセラレータイノベーショングループ ディレクター)だ。

 こうした中、AIの開発や実行で重要な役割を担うGPUの存在感が高まっている。特にエヌビディアのAI向けGPUは、世界中で争奪戦が繰り広げられるほど需要が高い。エヌビディアの後藤 祐一郎氏(エンタープライズ事業本部 vGPUビジネス開発マネジャー)は、ここ数年におけるAI用途向けGPUの需要の高まりについて次のように語る。

photo エヌビディア 後藤 祐一郎氏

 「AIモデルを開発するには、大量のデータを学習させる必要があります。その計算をGPUで処理すれば開発期間を大幅に短縮できます。完成したモデルを使ってテキスト生成や翻訳、画像認識や予測、ビジュアルコンテンツ生成などをする『推論』の処理でもGPUが役立ちます」

 世界的なGPU需要の高まりの背景には「AIの開発や運用を自社のIT環境で行いたい」という企業のニーズもあると後藤氏は言う。

 ChatGPTを自社のIT環境で使ったりその機能をアプリケーションに組み込んだりするには、OpenAIのAPIやMicrosoftが提供するクラウドサービスを利用する。しかし機密情報を他社のAIやクラウドサービスに入力することは、ナレッジの漏えいや共有、ガバナンスリスクなどにつながる可能性がある。また、知らないうちに生成AIのモデルがアップデートされて挙動が変わってしまう可能性もあり完全なコントロールが難しい。さまざまなリスクを回避するために自社のIT環境でAIを開発・運用するためにGPUの導入を検討する企業が増えているのだ。

 NECの原 康人氏(コンピュート統括部・サーバソリューショングループ プロフェッショナル)によれば、PCサーバの「Express5800シリーズ」を展開する同社にも上記のような要望が多数寄せられているといい、これに応えるためにGPU搭載サーバのラインアップを拡充した。

photo NEC 原 康人氏

 「エヌビディアのGPUは種類によって『画像や映像処理等のグラフィックス処理向き』『AIや解析等のコンピューティング向き』というように特性が異なります。NECはGPUの特性や市場に求められる領域に応じて、エントリーレベルのタワー型サーバからハイエンド向けのラック搭載型までGPUを搭載したサーバ製品を各種用意しています」(原氏)

「GPUがあればいい」の間違い 性能を引き出すソフトウェアが重要に

 高性能なサーバやGPUを導入すればAIの開発や運用が成功するというわけではない。GPUの性能を引き出すためのソフトウェアが不可欠だ。エヌビディアはGPUを提供するだけではなく、より使いやすくするためのソフトウェアツールの開発、提供に力を入れてきた。

 AI開発に威力を発揮するのが、ソフトウェアプラットフォーム「NVIDIA AI Enterprise」だ。NECの荒井氏は「AI開発における“OS”のようなもの」と表現する。

 「AIの開発でオープンソースのソフトウェアをよく使いますが、組み合わせやバージョン、IT環境との相性などによっては正常に動作しないこともあり、開発環境を自力で構築して維持するのは簡単ではありません。NVIDIA AI Enterpriseは、エヌビディアがさまざまなライブラリの組み合わせを検証して動作を保証できるものをコンテナ化して提供しています。これは商用Linuxに近いイメージで、AIモデルを動かすために欠かせない標準的なオープンソースソフトウェアを保守サポート付きでお使いいただけます」

 NVIDIA AI Enterpriseを導入するだけでもAI開発のハードルが下がる。さらに、生成AIの展開を加速するために設計された推論マイクロサービス「NVIDIA NIM」を利用可能だ。エヌビディアのGPUならオンプレミスやクラウドなどどこでも実行でき、幅広いAIモデルをサポート。NVIDIA NIMを通して業界標準のAPIを活用することで、企業用途に適したAIアプリケーションを迅速に構築可能だ。これにより、生成AIの推論を最適化し、トレーニングと推論の効率を劇的に向上できると後藤氏は説明して「オープンソースのソフトウェアを使うと1週間かかる展開作業が、NVIDIA NIMを利用すれば5分で完了します」と続ける。

 NECは、エヌビディアのソフトウェアツール群をNECのサーバ製品で動作検証をした上で提供しているため、ユーザーがソフトウェアとハードウェアの相性に悩まされることはない。またNECは、エヌビディアのソフトウェアを補完してAIの開発・運用をより身近なものにするためのソフトウェアも開発している。

 「AI開発におけるデータの前処理を大幅に高速化できるソフトウェア『FireDucks』を2024年度内にエンタープライズサポート付きでリリースする予定です。エヌビディア製GPUとの間でデータを直接転送して処理を高速化できる共有分散ファイルシステム『ScaTeFS for AI』も開発して提供しています。ScaTeFS for AIは、NECのストレージ製品『iStorage』を組み合わせることでAIシステム向けストレージとして利用できます」(荒井氏)

photo NECが開発したFireDucksとScaTeFS For AI の概要(提供:NEC)

「デジタルツイン」でもGPUが不可欠に

 GPUはAI開発だけに使われるものではない。もともとGPUはグラフィックス処理を高速化するために考案されたハードウェアであり、CGや3Dグラフィックス、VDIなどにおけるグラフィックス処理の高速化を目的に利用されている。近年大きな期待を集めているユースケースの一つが、現実世界を3D化、デジタル化してコンピュータの仮想空間で再現する「デジタルツイン」での利用だ。

 デジタルツインは、DXの文脈でAIと並んで注目を集めている。エヌビディアのGPU製品を使う企業の中には実用化にこぎ着けた例もあるという。

 「ある自動車メーカーは、現実の工場を仮想空間の中に再現して設備のレイアウト変更や作業効率の検証などをシミュレーションしています。あるホームセンター会社は、現実の店舗をデジタルツイン化して実店舗で商品が売れたらデジタルツインの店舗からも商品が消える『仮想と現実のリアルタイム連携』を実現しています」(後藤氏)

 こうしたソリューションを実現するためにエヌビディアが提供しているのが、デジタルツインを実現するプラットフォームとなるソフトウェア「NVIDIA Omniverse Enterprise」(以下、NVIDIA Omniverse)で、NECも2024年11月から販売を開始している。NVIDIA Omniverse単体で3Dの仮想空間を制作するのではなく、さまざまな業界で広く活用されている主要な3Dソフトウェアとの接続をサポートすることで、各種ツールを使って制作した3Dデータや異なるソースからのコンポーネントを統合し、3Dシーンを「レイヤー化」することができる3Dフォーマットの「OpenUSD」に変換して仮想空間で利用できるようにする。

 別々のツールで制作した「工場全体の空間CADデータ」「3Dスキャナーで実際の工場を読み込んだ点群データ」「製造設備の3Dモデル」「ロボットや作業員の3Dモデル」などを同じ仮想空間に配置して「仮想工場」を構築し、現実世界の工場では実施に時間がかかる困難な検証作業を可能にする。製造業以外の業種でもこうした「デジタルツイン」が注目されており、その実現のために高速なグラフィックスやAIの処理が可能なGPUの需要が高まっている。

GPUを活用したAI、デジタルツインの統合基盤を実現

 GPUの利用シーンは増えているが、せっかく導入した高価なGPUが投資対効果を発揮できていないケースも散見されると後藤氏は指摘する。

 「通常だと1枚のGPUでは、サーバ1台のみでしか利用できません。それぞれの部署や拠点が個別用途に合わせてGPUサーバを導入しているため多くのコストがかかってしまいますし、GPUの利用者を増やすことができません。そして、個別用途でのGPUサーバを使わない期間はGPUのリソースを遊ばせることになってしまいます」

 この課題を解決するためにエヌビディアが提供しているのが仮想GPUの技術「NVIDIA vGPU」だ。「VMware vSphere」などのサーバ仮想化基盤に専用ソフトウェア「NVIDIA vGPU Manager」を導入すると、サーバに搭載したGPUのメモリを仮想GPU(vGPU)として分身することで、複数台の仮想マシンで高いコア性能を効率的に最大限共有しながら利用できる。

 この技術は、オンプレミス環境でAIを開発・運用する上で重要になると荒井氏は述べる。

 「今後AIとデジタルツインの領域は互いに接近し、連携を深めていくでしょう。エヌビディアのGPU、NVIDIA AI EnterpriseやNVIDIA Omniverseといったエヌビディア製ソフトウェア同士の連携はもちろん、サーバや各種ソフトウェアなどを単一の統合プラットフォームで運用するためのNVIDIA vGPUによるGPUリソースの仮想化も今後ますます重要になってくると考えています」

photo グラフィックスやコンピューティングなど、さまざまな用途に活用可能な“DX推進仮想基盤”という使い方ができる。AI、デジタルツインの統合プラットフォームとしても期待される(提供:エヌビディア)
photo NEC 小林竜也氏

 AIやデジタルツインの統合プラットフォームを実現するために、NECはエヌビディアのGPUとソフトウェアの組み合わせ検証やベンチマーク作業にも力を入れている。NECの小林竜也氏(コンピュート統括部・アクセラレータイノベーショングループ 主任)は、こうした作業の目的や意義について次のように述べる。

 「GPUがどのような特性を持っているのか、どのようなユースケースに向いているのか、AIモデルやそれを動かす推論ソフトウェアがどれだけのリソースを必要とするのか、バッチサイズやデータタイプなどの各種パラメーターの設定が機能や性能にどう影響するのか――実機での技術検証やベンチマーク作業によって知見をためることで、お客さまにより価値の高い提案ができるようになります」

 さらに、GPUを搭載したNECサーバを手軽に使ってもらえるように製品の機能強化はもちろん、その提供形態にも工夫を凝らしている。

 「これまでは買い切りタイプだったExpress5800シリーズやiStorageシリーズを、月払いの従量課金で利用できるサービス(「『Express5800従量課金サービス』『iStorage従量課金/定額課金ストレージサービス』)を開始しました。システム全体の運用保守を丸ごと請け負う『マネージドプラットフォームサービス』も提供しています。その他にもGPU搭載サーバ製品に関するさまざまな提案が可能ですので、GPUのニーズをお持ちの方はお気軽にご相談ください」(原氏)

photo NECのマネージドプラットフォームサービス(提供:NEC)

エヌビディアの製品に付加価値を与えるNEC

 NECはエヌビディアのソフトウェアとハードウェアを取り扱うだけでなく、そこに自社の価値を付加して提供している。

 後藤氏はエヌビディアの視点から「NVIDIA AI EnterpriseとNVIDIA Omniverse、NVIDIA vGPUの3つをNECさま自らが使いこなすことでノウハウを蓄積されています。生成AIやデジタルツインをはじめとしたさまざまなユースケースに精通しているパートナーさまです。お客さまのゴールを前提に、ハードウェアやソフトウェア、統合プラットフォームを適切に組み合わせて提案し、構築や運用まで支援できるSIerさまは、お客さまにとって非常に貴重な存在になるのではないでしょうか」と信頼感を示す。

 NECの荒井氏はそれに応えるように「エヌビディアのハードウェアやソフトウェアはお客さまのAI活用やDXに非常に有用だと考えています。これらの価値をきちんと検証してお客さまに伝えると共に、検証により蓄積したノウハウや知見、NECが開発したソフトウェアといったNEC独自の強みを付加することで企業のAI活用やDXを支援していきます」と結んだ。

photo エヌビディアとNECのメンバー

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提供:日本電気株式会社、エヌビディア合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2024年12月20日