トランプ政権の新方針 サイバー領域と暗号資産を担当するユニットを刷新Cybersecurity Dive

トランプ政権は新興技術の分野における個人投資家を保護するために、詐欺対策部門を刷新した。法律の専門家が予想する刷新の狙いとは。

» 2025年02月28日 08時00分 公開
[David JonesCybersecurity Dive]

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 米国証券取引委員会(SEC)は2025年2月20日(現地時間、以下同)、新興技術の分野における個人投資家を保護するために、詐欺対策部門を刷新すると発表した(注1)。これは暗号資産やサイバーセキュリティに関するトランプ政権の方針変更に基づくものだ。

トランプ政権、暗号資産の詐欺対策に向けた専門組織を刷新

 詐欺対策部門である「The Cyber and Emerging Technologies Unit」(CETU:サイバー・新興技術ユニット)はローラ・ダレード氏が率いる。従来の「The Crypto Assets and Cyber Unit」(暗号資産・サイバーユニット)に代わる組織であり、SEC全体から集められた詐欺対策の専門家約30人が所属する。刷新後のCETUは、委員であるヘスター・バース氏の指導の下、2025年1月に発足した暗号資産のタスクフォースを補完する役割を担う(注2)。

 SECのマーク・ウイエダ氏(委員長代行)は、声明で次のように述べた。

 「同ユニットは投資家を保護するだけでなくイノベーションを促進し、資本形成と市場の効率化に貢献する。また、イノベーションを悪用して投資家に損害を与え、新興技術への信頼を損なう者を排除する」

 詐欺対策部門の刷新は、トランプ政権による新技術の監督を効率化する取り組みの一環だ。

 サイバーセキュリティを規制するためのSECの取り組みは、ゲイリー・ゲンスラー氏(前委員長)の時代に激しい議論の的となっていた。ゲンスラー氏は企業に対して重大なデータ侵害を報告し、投資家に対してリスク軽減策に関する最新の情報を提供するよう求める措置を支持していた。

 ダレード氏は2024年12月に暗号資産・サイバーユニットの共同議長に昇進した。

 CETUはサイバー開示に関する事項やML(機械学習)を含めたAIに関する新たな懸念、ブロックチェーン技術や暗号資産に関連する詐欺をはじめとする複数の分野を優先的に取り扱う予定だ。

 法律事務所であるSaul Ewingのパートナーであり、マサチューセッツ州の元連邦検事補であるアローク・チャクラバルティ氏は、次のように述べた。

 「暗号資産業界の企業や投資家を国内に誘致し、規制上の障壁を緩和するという政権の度重なる意向に沿って新設された本ユニットは、業界関係者を標的にするのではなく、より広範なサイバー犯罪や、業界の垣根を超えて個人投資家に影響を及ぼす問題に焦点を移していく兆しを見せている」

 米国を拠点とする暗号資産取引所であるCoinbaseは2025年2月21日に、SECの職員が同社に対する訴追を原則的に取り下げることに同意したと発表した(注3)。ただし、最終的には委員会の承認が必要となる。

 法律事務所であるTroutman Pepper Lockeのマイケル・ロー氏(パートナー)は「同ユニットの設立は、SECが全てのデジタル資産を『証券』として扱う方針を転換しつつある旨を示唆している」と述べた。しかし、ロー氏は、SECがサイバー開示規則の執行方法を大きく変更することはないとみているようだ。

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