SAPは、SAP ECCからの移行に伴う顧客離れを防ぐため、2033年までのビジネス継続支援サービスを提供する。ただし、支援を受けるには条件もある。
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SAP SE(SAPのグローバル本体)は2025年1月28日(現地時間)の2024年第4四半期決算説明会で、「複雑なERP移行に苦慮する既存顧客に対し、2033年までのビジネス継続支援サービスを提供することで手を差し伸べる」と語った(注1)。
一方で同社は、「『SAP ERP Central Component』のオンプレミスソリューションに対する保守サポートを2027年に終了し、延長サポートも2030年に終了する方針は維持する」としている。どのような状況のユーザーを2033年まで支援するのだろうか。
SAP SEは「RISE with SAP」への移行を終えるまでに時間を要する企業向けに、プライベートクラウド版ERPへの移行オプションを追加する予定だ。
移行サービスはオンプレミスのサポートを延長するものではなく、2031年以降にRISE with SAPへの移行を確約する全ての顧客が利用できるようになる。同社のクリスチャン・クライン氏(CEO)は、次のように述べている。
「われわれは顧客を取り残したくない。クラウド化のニーズが高まる中、完全なクラウド移行と変革を実現するために、このオプションを必要とする一部の大口顧客には支援を惜しまない」(クライン氏)
SAP SEは顧客を遠ざけることなく移行を促すという絶妙なバランスを取っている。同社は2024年、RISE with SAPと「GROW with SAP」のERP移行プログラムに金銭的インセンティブと技術サポートを追加したことに加え、組織再編に数十億ドルを費やすなど、パブリッククラウド版ERPにおける取り組みを強化した(注2)(注3)。
この取り組みを続けたことが功を奏し、同社のクラウド売上高は前年同期比25%増の171億ユーロ(178億ドル)となり、3四半期連続で総売上高が2桁成長を達成した(注4)。
「2020年以降、クラウド収益は2倍以上に増加し、当社の総収益の半分を占めるまでになった」(クライン氏)
「クラウドERPスイートは成長の原動力となり、2024年には34%の伸長を見せクラウド総収益の84%を占めた」とドミニク・アサム氏(CFO《最高財務責任者》)も決算発表で述べている。
2025年、同社は移行サービスの提供にとどまらず、RISE with SAPの提供内容をさらに拡大するという。具体的には、IT管理ソリューションの「SAP LeanIX」、ビジネスプロセスソフトウェアスイートの「SAP Signavio」、デジタル導入プラットフォームの「WalkMe」を移行パッケージに追加する予定だ。
また、全ビジネススイートにわたって、追加交渉なしでクラウドソリューションをアップグレードできるライセンスオプションも導入する予定だとクライン氏は述べている。
SAP SEの変革の一環として、同社は2024年に移行専任部門を新設し、2019年に取締役に就任する前はCIO(最高情報責任者)兼ITサービス部門グローバル責任者を務めていたトーマス・ザウレッシグ氏が指揮を執っている。
さらに同社は「ザウレッシグ氏の契約を3年延長し、フィリップ・ヘルツィヒ氏(最高AI責任者)の肩書にグローバルCTO(最高技術責任者)の役割を追加した」と2025年1月28日に発表した(注5)。
「2025年、当社は再びAIに注力する。3万人以上の開発者がAI基盤の強化と新たなユースケースの創出に取り組み、AIへの投資を大幅に増やす予定だ」(クライン氏)
(注1)Connect everything.Achieve anything.(SAP)
(注2)SAP revamps migration support programs, adds financial incentives(CIO Dive)
(注3)What’s behind SAP’s massive restructuring push?(CIO Dive)
(注4)Q4 and FY 2024 Results(SAP)
(注5)Sebastian Steinhaeuser to Join the SAP Executive Board Executive Board Member Thomas Saueressig’s Contract Extended(SAP)
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