Broadcomが「2026年末までにVMユーザーの大半がサブスクリプション型へ移行する」と強気に語れるワケ

BroadcomはVMwareユーザーをVMware Cloud Foundationへ誘導するために、パートナー戦略を強化している。「2026年末までにVMwareの顧客の大半がサブスクリプション型へ移行する」という同社の戦略とは。

» 2025年04月18日 07時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 BroadcomがVMwareを買収し、1年が経過した。「VMware」の永続ライセンスをサブスクリプション型に変更し、バンドルを4つに集約したことで多くの企業に困惑が広がった。通信サービスを提供するAT&Tは、ライセンスサポートの延長を求めて訴訟を起こすなど不満を表明している。

 一方で、Broadcomは仮想化ソフトウェアの販売を拡大するために、仮想化ソフトウェア群の販売拡大に注力している。リセラーやサービスプロバイダーの参画を促すことを優先事項とし、特に「VMware Cloud Foundation」(以下、VCF)の導入を増やすため、パートナーとの連携強化に目を向けている。

 BroadcomのVCF部門でプロダクトマーケティングを担当するプラシャンス・シェノイ氏(バイスプレジデント)は、「2026年末までにVMwareの顧客の大半がサブスクリプション型のバンドルへ移行すると見込んでいる」と話す。Broadcomのビジネス戦略とは。

Broadcomの戦略は大きな転換点を迎える

 シェノイ氏は「CIO Dive」に対し、「私たちはパートナーとの取り組みを強化している。当社のサービスモデルは、Broadcom主導のモデルからパートナー主導のモデルへと移行した」と語った。

 この戦略は、Broadcomにとっての大きな転換点となるだろう。

 VMwareのパートナープログラムは、今回の買収によって最初に影響を受けた多くのもののうちの一つだった。610億ドルの買収が完了した後の数カ月で(注1)、Broadcomは永続ライセンスの提供を終了し、サブスクリプション型の課金プランに切り替えた他、数千あった「VMware」製品のSKU(識別コード)を4つの大きなバンドルに削減し(注2)、サードパーティーによるサポート体制も急速に再編した。

 Broadcomは、1万8000社以上のVMwareのリセラーに対して、「Broadcom Advantage」のプログラムへの移行を呼びかけ(注3)、既存のリセラー契約を解約した。

 変更のスピードおよび規模、影響の大きさによって多くの企業顧客の間に困惑が広がった。通信サービスを提供するAT&Tは2024年の夏に、ライセンスサポートの延長を求めて訴訟を起こし、最終的に和解に至った(注4)。しかし、新体制の下でVMwareのコストが急増し、業務運営に支障をきたしかねないと不満を訴えたのは同社だけではなかった。

 2024年、VMwareの顧客は選択肢を検討する機会を得た。シェノイ氏によると、Broadcomは、全体的なコストが高いとしても、他の選択肢と直接比較した場合、フルスタックのプラットフォームであるVCFの方がより高い価値を提供できると確信していたという。

 Broadcomのホック・タン氏(CEO)は、2025年3月の初めの第1四半期の決算説明会で「当社のVMwareの顧客のうち、大規模な組織の3分の2以上がVCFを採用した」と述べた(注5)。また、同氏によると、より小規模な仮想化ソフトウェアバンドルである「VMware vSphere」を利用している顧客のうち60%が、サブスクリプション型の課金プランに移行したという。

 「当社のビジネスモデルおよび製品ポートフォリオ、提供戦略、市場へのアプローチ戦略、市場におけるパートナーとの提携がようやく一段落した」(シェノイ氏)

 シェノイ氏は、2026年末までにVMwareの顧客の大半がサブスクリプション型のバンドルへ移行すると見込んでいる。今後、Broadcomは、VCF 9の統合アップグレードをβ版から本格運用へと移行させることに注力しつつ(注6)、AIおよびランサムウェアリカバリー、データ保護機能などを含むプライベートクラウドの新機能も順次展開する予定だ。

 「私たちはプライベートクラウドの復活に大きく賭けている。私たちが構築しているのは、オンプレミスでパブリッククラウドのような体験を実現するモダンなプライベートクラウドだ」(シェノイ氏)

リセラーの活性化

 テクノロジーパートナーは、一次提供元である主要プロバイダーからは必ずしも得られない企業特有の技術サポートやガイダンスをIT顧客に届ける橋渡しの役割を担う。

 Broadcomでグローバル・コマーシャルセールスとパートナーを担当するブライアン・モーツ氏(シニアバイスプレジデント)は、2025年1月のブログ投稿で次のように述べた(注7)。

 「パートナーは、地域に根ざした専門知識やスケーラビリティ、付加価値のあるサービスを提供できる特別な立場にある」

 2025年1月にモーツ氏は「パートナーとの連携強化や、リセラーおよびサービスプロバイダーから成るエコシステムへの再投資を約束し、トレーニングや認定プログラムを通じた支援を提供する」と述べている。

 Broadcomは、VCFの導入を推進するために頼りにしている広範なネットワークを構成するリセラーおよびグローバルなSIer、マネージドサービスプロバイダーに対し、同社のVMwareに関する優先事項を明確に伝えた。

 ITサービス企業であるDXC Technologyでクラウドおよびインフラの領域を担当するホランド・バリー氏(最高技術責任者)は、次のように語る。

 「それらの企業は私たちに対して『最適化やプライベートクラウドの実現など、これまで話し合ってきた全てを任せたい』と言っている。つまり、それらの実現を私たちに託しているのだ」

 2024年にクラウドパートナーとしてVMwareと契約を締結した最初のグローバルサービスプロバイダーのうちの1社がDXCだった(注8)。バリー氏は、この激動の移行を最前線で見守ってきた。

 「企業のIT基盤にとって極めて重要なものを変更するとなれば、感情的なやりとりが続くのは当然のことだ。初期の段階では、VMwareに代わる選択肢を検討したいという声も多かった」(バリー氏)

 顧客が他のベンダーへの乗り換えを検討する中で、Broadcomがプライベートクラウドに対するビジョンを明確に示し、緊張の一部は和らいでいった。

 「VMwareからの移行は非常に難しい。確かにアプリケーションやデータセットを移して他の選択肢を試す人たちもいる。しかし、数万から数十万ものコアを保有するような大規模な企業の場合、そのような変更は決して容易ではない」(バリー氏)

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