SalesforceがInformaticaを約80億ドルで買収する。同社はこれまでもデータ可視化ツールTableauなどを買収してきたが、今度はデータ基盤整備の領域に手を打った形だ。
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Salesforceは2025年5月27日(現地時間)、Informaticaを約80億ドルで買収する最終合意を締結した。
買収額はSalesforceが既に保有するInformatica株式を差し引いた後の株式価値に基づいて算出したものだ。InformaticaのクラスAおよびクラスB-1普通株の株主は1株あたり25ドルの現金を受け取る。
Informatica製品は、データカタログやデータ統合、ガバナンス、品質管理、プライバシー保護、メタデータ管理、マスターデータ管理(MDM)といった機能を持つ。一方のSalesforceは「Agentforce」に力を入れており、AIエージェントを活用したビジネスプロセスの高度な自動化を推し進めている。
SalesforceはInfomaticaが持つデータ基盤整備関連の機能を自社プラットフォームに組み合わせることでデータ基盤整備に関わる領域を強化し、「責任あるエージェント型AI」の展開を支えるための統合アーキテクチャーを確立する狙いだ。
Informaticaの持つ高度なデータ可視化機能はデータの出所や変化の履歴、使用状況を明確にし、監査や規制対応に寄与する。豊富なメタデータとSalesforceの統合データモデルが合わさることで、AIエージェントはデータを文脈に基づいて理解・活用できるようになる。MDMやデータ品質管理、ポリシー運用関連の機能を活かせば、AIを支えるデータの標準化や正確性、一貫性、安全性も確保しやすい。
Salesforceはこの買収を「Salesforceの各製品群に多面的な効果をもたらす」としている。
「Data Cloud」においてはInformaticaの機能により顧客データプラットフォーム(CDP)としてのリーダーシップが強化され、組織全体のデータを一元化するだけでなく、信頼性と実用性も高まる。AgentforceにおいてもInformaticaとの統合がAIエージェントの基盤強化に寄与すると見られている。
「Salesforce CRM」の「Customer 360」機能も向上し、より個別化された顧客体験の提供が可能になる。
さらに「MuleSoft」においてはInformaticaのデータ統合や品質管理、ガバナンスの技術が、APIを通じて流れるデータの標準化と信頼性を担保する。「Tableau」においても、Informaticaの機能を活用することで、より文脈に即したデータインサイトの提供が期待されている。
Salesforceは買収完了後、Informaticaの技術を迅速にSalesforceプラットフォームに統合する計画であることも発表した。Agentforceにおけるメタデータ統合やData Cloudにおける単一データパイプラインとMDMの構築などが予定されている。
またSalesforceはInformaticaが進めるAIを活用したデータ管理製品の開発戦略を継続的に支援し、マルチクラウド環境を含むあらゆる環境でデータの接続や統合、管理を可能にする統合型プラットフォームの提供を目指すとしている。
この取引は両社の取締役会によって承認されており、2027年度初頭に完了する見込みだ。Informaticaの議決権の約63%を保有する株主からは既に書面での承認が得られている。
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