CrowdStrikeは年間の経常収益100億ドルを達成するための計画の一環として、全世界の従業員の5%に当たる500人の人員を削減すると発表した。CEOのジョージ・カーツ氏が語る決定に至った3つの理由とは。
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サイバーセキュリティ事業を営むCrowdStrikeは、2025年5月7日(現地時間、以下同)に規制当局に提出した文書で、事業規模を拡大し、年間の経常収益100億ドルを達成するための計画の一環として、全世界の従業員の5%に当たる500人の人員削減を実施すると発表した。
米国証券取引委員会(SEC)に提出された文書に添付されたメモで(注1)、CrowdStrikeのジョージ・カーツ氏(CEO)は従業員に対し、「当社は今後も顧客対応や製品エンジニアリングのポジションで採用を続けるものの、より効率的な経営を実現し、市場におけるリーダーシップを維持するために組織の変更が必要だ」と伝えた。
「現在、私たちは市場とテクノロジーにおける転換点に立っている。AIがあらゆる業界に変革を起こし、脅威が拡大し、顧客ニーズも急速に変化している。約1万人の従業員を擁する大規模な組織を率いて、年間の経常利益100億ドルを達成するために、私たちは運営方法を進化させなければならない」(カーツ氏)
カーツ氏はこの決定に至った要因として、次の3点を挙げた。まず、AIへの投資が業務遂行や効率性の向上を推進し、同社の採用ペースが落ち着きつつあること。次に、市場の需要が依然として堅調な成長をもたらしていること。そして、多くの顧客が同社の「CrowdStrike Falcon」プラットフォームへの統合を進めていることから、市場開拓やカスタマーサクセス部門の規模を拡大していることである。
CrowdStrikeは競争が非常に激しい市場環境で事業を展開している。競合企業であるPalo Alto Networksが、顧客を自社のプラットフォームに移行するために打ち出したインセンティブ施策は物議を醸したが(注2)、この施策により、市場シェアを維持するために複数の企業が価格競争を繰り広げる事態となった。
また、2024年7月にソフトウェアのアップグレードの欠陥に関連して発生した世界的なIT障害の後(注3)、CrowdStrikeは大きな圧力に直面した。この障害では800万台以上の「Windows」のコンピュータが一時的に影響を受け、その直後から競合企業がCrowdStrikeの市場シェアを奪おうと攻勢を強めていた。
カーツ氏は今回の人員削減が困難なものであることを認め、「水曜日と木曜日はオフィスを閉鎖し、従業員は自宅で仕事することになる」と述べた。
CrowdStrikeは、今回の措置に関連して3600万ドルから5300万ドルの費用を見込んでおり、2025年4月30日に終了した2026年度の第1四半期に700万ドル、残りのほぼ全てを第2四半期に計上する予定だ。
この費用には、退職金や従業員手当および関連費用として1900万ドルから2600万ドルの現金支出の他、株式報酬に関連する1000万ドルから2000万ドルの非現金費用が含まれている。
CrowdStrikeはこの度の人員削減を第2四半期末までに完了する見込みだ。同社は2025年3月に発表した業績予想を再確認し、2026年1月31日に終了する会計年度を通じて戦略的な分野での採用を続けるとした。
第1四半期の業績は2025年6月3日の市場終了後に発表される予定である。
調査企業であるForresterのジェフ・ポラード氏(バイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト)は、次のように述べた。
「この度のCrowdStrikeの措置は、全ての業界が直面している経済的な変動からサイバーセキュリティ業界も逃れられないことを皆に示しただろう」
(注1)CrowdStrike Holdings, Inc.(SEC)
(注2)Palo Alto Networks’ free incentives offer sparks investor anxiety(Cybersecurity Dive)
(注3)CrowdStrike blames mismatch in Falcon sensor update for global IT outage(Cybersecurity Dive)
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