ウォルマート、コーディング支援ツールで約400万時間の開発工数を削減CIO Dive

AIプロジェクトが滞る会社が多い中、ウォルマートは確かな手応えを感じている。同社がAIを通じた開発効率アップや顧客体験の向上を実現した背景には、AIプロジェクトに対するある考え方が影響している。

» 2025年05月29日 10時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 WalmartがAIを活用したコーディング支援および補完ツールの導入を拡大する計画を立てている。同社の経営陣は、導入の初期段階で成果が出ていることを受けて判断したと2025年2月20日(現地時間)の第4四半期の決算説明会で語った。

生成AIとAIエージェントで業務革新へ

 ダグ・マクミロン氏(CEO)によると、デプロイを効率化し、バグを減らしてコードをより早く提供することで、2024年には約400万時間分の開発者作業を削減するのに貢献したという。

 Walmartは2025年、北米とインドの全ての開発者がこのツールを利用できるようにする予定だ。

 「生産性が向上し、ルーティン作業の時間が短縮されることで、ビジネスの成長と加速に役立つツールを開発する時間を作り出せる」(マクミロン氏)

 同社は生成AIの導入にいち早く取り組んでいる。同社がAI技術の活用方法のリサーチから実行へと移行する際「幅広く試してから絞り込む」というアプローチを取ったと「CIO Dive」は2024年に報じている(注1)。

 WalmartがAIに対するアプローチを見直す中で、特に焦点を絞ることが重要なポイントだった。Boston Consulting Groupのデータによると、2024年にAI戦略を実施し、高度な能力を構築して利益を実現し始めた企業も同様のアプローチを取っていたという(注2)。先進的な企業は、そうでない企業と比べて実施するAIプロジェクトの数が約半分だったようだ。

 Walmartは生成AIへのアクセスを拡大し、顧客や従業員の体験を向上させるためにAIを活用することに注力した(注3)。同社は社内向け生成AIツール「My Assistant」の活用を推進し、現在ではより多くの開発者がAIのコーディング支援ツールを使用するようになっている(注4)。また、この技術を使ってデータの整備を進め、検索・発見機能を向上させることで最終的に顧客体験の向上につなげた(注5)(注6)。

 2024年、AIに対する企業の幻滅感が高まっていたにもかかわらず、ほとんどの企業はAI技術に優先的に取り組み続けた(注7)。

 IBMの報告書によると、IT意思決定者の5人中4人以上が、2024年に自社がAIの目標に向かって前進したと回答しているものの、そのリターンはなかなか得られなかったという(注8)。まだROIに到達していない企業の大半は3年以内にコスト削減につながると見込んでおり、約44%はもっと早い時期に転換すると予想している。

 一方で、一部の企業では継続的な取り組みが既に報われ始めている。食品メーカーGeneral Millsの幹部は2025年2月第4週初めの会議で、AIプロジェクトが数百万ドルのコスト削減につながったと述べた(注9)。金融サービス会社のCharles Schwabも、AI活用の拡大とコスト削減を結び付けている(注10)。

 AIエージェントは、効率化の推進や顧客体験の向上を目指す企業が現在注目している最新の分野だ(注11)。Boston Consulting Groupの調査によると、3分の2の企業がすでにAIエージェントを導入しているという。Walmartは加盟店の供給管理に関する問題の根本原因を特定するためにAIエージェントを活用していると述べた。

 「AIによりコスト削減と業務効率化の機会を得られているため、どれだけAI技術に投資するかについて柔軟に判断を下しています」(マクミロン氏)

 Walmartの2024年第4四半期の売上高は4.1%増の1806億ドルだった(注12)。eコマース事業と食料品部門も成長したが、2025年度の利益成長は鈍化すると予測している(注13)。

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