トラックの「積載率」向上を目指す理由は 物流の「2024年問題」について、富士通に聞いてみた【後編】:【特集】物流Techのいま
物流業界における人手不足をはじめとする問題がより深刻化する「2024年問題」“到来の年”が間近に迫っている。問題の解決にITはどのように貢献するのだろうか。富士通に「2024年問題」への取り組みを聞いた。
物流業界における人手不足をはじめとする問題がより深刻化する「2024年問題」“到来の年”が迫っている。山積する問題の中で、ITによる解決が可能なものとは何か。問題解決にITはどのように貢献するのだろうか。
課題が山積する物流業界 富士通の取り組みとは
前編(物流の「2024年問題」にITはどう貢献する? 課題を解説)では現状の課題とそれに対する解決策の概要を紹介した。後編となる本稿では、山積する物流業界の課題に対する富士通の取り組みを同社の横山正弘氏(Digital Solution事業本部 次世代交通システムインテグレーション事業部)に聞く。
前編では物流の「2024年問題」という切り口で、人手不足をはじめとする物流領域における課題をみてきた。物流はわれわれの生活の土台を支える社会インフラ機能の一つでもあるため、「2024年問題」は物流業界にとどまらない社会課題だといえる。
山積する課題の中でITによる解決が期待できる課題が次の3点だ。
- デジタル化が進んでいないために物流が可視化されていない
- データの標準化ができていないため、業界、業種を超えた連携が難しい
- トラックの容量に占める荷物の量を示す積載率が40%未満と低い(経済産業省、国土交通省、農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」)
中でもITが直接的に貢献するのが、データの標準化とデータ一元化による物流の「可視化」(見える化)だ。さらに倉庫管理や配車業務、運行管理などの各種ソリューションによって最適化することでドライバーやトラックといった既存のリソースを最大限に生かすことにつながりそうだ。
ここから富士通が提供する物流関連のソリューションを2つ紹介する。
配車支援ソリューション「Logifit TM-配車」
1つ目が配車支援ソリューション「Logifit TM-配車」だ。
横山氏によると、Logifit TM-配車による配車計画の立案の完成度は80%程度であるため、配車担当者が修正してから実行する必要があるという。
「なぜ100%でないのかというと、道路工事の情報など時々刻々と変化するリアルタイム情報や、デジタル化できない地域特有の情報のような、いわゆる暗黙知の情報の存在といった制約があるからです」(以下、断りのない会話文は横山氏による発言)
運行管理ソリューション「Logifit TM-NexTR」
富士通が提供するもう一つのソリューションが運行管理ソリューション「Logifit TM-NexTR」だ。同ソリューションはトラックに積載するデジタコ(注1)やスマートデバイスのGPS情報を基にリアルタイムで運行管理する。
情報は物流企業の本社などだけでなく、設定によって荷主企業にも公開することも可能だ。荷主企業から物流企業に対する問い合わせ時間の短縮を図る。
「リアルタイムに状況を把握できるため、道路状況や予定の変更などに合わせて柔軟に配送ルートの変更指示を出したり、事故に遭った場合は即時に対応したりできます。また、予定よりも早く帰庫する場合は次の仕事を段取りすることも可能です」
なぜ「積載率」を上げなければならないのか
こうしたソリューションを活用することで、例えば配達を終えて空になった荷台に別の荷物を載せて運搬することも可能になる。「ドライバーの拘束時間や走行距離を増やすことなく、最大限に活用することができるようになります」
このように空きスペースの有効活用を積み重ねることで、積載率向上につなげたい考えだ。上記でも3つの課題の3つ目としてトラックの積載率が40%未満と低いことに触れたが、そもそもなぜ積載率を上げる必要があるのだろうか。
「積載率の向上は物流企業や荷主企業の利益率向上だけでなく、CO2排出量の削減にもつながります。われわれはシステムの提供を通じて顧客企業の課題解決と合わせて社会課題の解決にも貢献したいと考えています」
(注1)「富士通デジタコ」(デジタルタコグラフ)は国土交通省認定の法定3要素を基本としたデジタル運行記録計。リアルタイムに運行データをクラウドに送信、蓄積し、参照管理できる。
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