マジモバの料金を見ると、3GBで770円という金額は確かに安い。MVNO最大手のIIJが展開するIIJmioの「ギガプラン」は2GBが850円、オプテージのmineoも「マイピタ」の1GBが1298円で、いずれもマジモバよりやや割高だ。大手キャリアに目を向けると、ドコモのirumoは3GBが2167円、オンライン専用プランだとKDDIのpovo2.0やソフトバンクのLINEMOが、3GBを990円で提供している。
一方で、15GB、25GB、50GBの3つを用意した最驚プランは、必ずしも他のMVNOと比べて料金が安いわけではない。例えば、マジモバの15GBは2508円だが、IIJmioなら同じ容量を1800円で利用できる。25GBの3278円も、IIJmioが2700円で提供している30GBプランより割高だ。安さを志向しているものの、あくまで最安狙いではなく、コラボ先の魅力で一定程度の価格を維持するのがエックスモバイルの戦略だ。木野氏も、「(大手MVNOと)価格競争しても勝ち目はない」と話す。
エックスモバイル、コラボMVNOとして話題を集めていたHORIE MOBILEも同じ発想で運営している。同ブランドの20GBプランは、5分かけ放題がついて3030円。その金額は、ドコモのオンライン専用ブランドahamoより高い。
ただ、HORIE MOBILEのユーザーには堀江氏の手掛けるコンテンツが無料で提供される特典が付く。これらは有料コンテンツのため、同氏のファンにとっては魅力的だ。“おごってもらう”をテーマに、PPIHの店舗が運営する商品を無料で配る特典も、「同じ発想で生まれた」(同)という。料金の安さではなく、「満足を追求してほしい」(同)という思いが、コラボレーションの根底にある。
とはいえ、あまりに料金水準が平均から乖離(かいり)していると、ユーザーが離れてしまう恐れもある。その意味で、ドコモが10月にahamoのデータ容量を増量する影響は、MVNO全体に及ぶ可能性がある。くしくもドコモは、PPIHが開催したイベントと同日の9月12日に、ahamoのデータ容量を20GBから30GBに改定することを発表。料金は2970円のままだ。
先に挙げたIIJmioの30GBプランは2700円だが、その差はわずか270円。5分間の音声通話定額が付いていたり、国際ローミングが無料で使えたりすることを踏まえると、ahamoのお得感に軍配が上がる。マジモバも、最驚プランの25GBが3278円でahamoよりデータ容量が5GB少ないにもかかわらず、料金は308円高い。最驚プランも音声通話定額が含まれていないため、実質的な差はさらに広がる。
ドコモがahamoの提供を開始した際には、MVNOに大きな影響を与えた。料金水準がMVNOに迫っていたからだ。業界では“ahamoショック”とも言われており、MVNOの純増に急ブレーキがかかった経緯がある。マジモバは料金だけで差別化を図っているわけではないが、そもそもahamoの料金に満足していれば、他社に移る動機が薄くなる。少なくとも、その差を埋めるための“おごり”を強化するなど、対応策が必要になるおそれはある。ahamoショックの“第2波”が到来したことで、今後、MVNO各社の動きも活発になりそうだ。
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