シャープの「AQUOS R10」「AQUOS wish5」で“進化の方向性”が違う理由 iPhoneからのユーザー獲得にも意欲:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
シャープは、ミッドハイでシリーズの標準モデルとなる「AQUOS R10」と、エントリーモデルの「AQUOS wish5」の2機種を発表した。AQUOS wish5は特に強化しており、若年層の獲得や海外でのシェア拡大を見越している。AQUOS R10はマイナーアップデートの印象が強いが、10万円前後という価格の維持に努めた。
シャープは、ミッドハイでシリーズの標準モデルとなる「AQUOS R10」と、エントリーモデルの「AQUOS wish5」の2機種を発表した。AQUOS R10は、2024年のフルモデルチェンジを受け、開発された後継機。カメラに、「AQUOS R9 Pro」譲りの「14chスペクトルセンサー」を搭載した他、最大輝度を3000ニトまで向上させたディスプレイや音圧、ひずみを改善したスピーカーを搭載する。
対するAQUOS wish5は、3万円台の価格を維持しながらタフネス性能を向上させ、新たに「IPX9」に対応した。これによって、高温高圧の水流にも耐えられるようになった。また、子どもの利用シーンンも想定して、端末を振ると保護者に電話がかかり、位置情報を知らせる機能も搭載した。スペック面では、ディスプレイが120Hzのリフレッシュレートに対応しており、エントリーモデルながら残像感が少なく、滑らかなスクロールをすることが可能になっている。
2機種を見ると、特にAQUOS wish5を強化している印象が強いが、ここには「入口」や「海外」を押さえていきたいシャープの狙いがあった。対するAQUOS R10は、好調だった前モデルの路線から、エコシステムを引き継ぎつつ価格を維持。ハイエンドの資産も流用することで激戦になっている「10万円前後」の市場で勝負に挑む。そんなシャープの戦略に迫った。
120Hz駆動にIPX9の防水対応と大きく進化したAQUOS wish5
新モデルとして登場したAQUOS R10、AQUOS wish5だが、どちらかといえば、後者の方が前モデルからの進化の幅が大きい。AQUOS wish4で搭載した6.6型のディスプレイサイズはそのままに、プロセッサをMediaTekの「Dimensity 6300」にリニューアル。処理能力を向上させつつ、ディスプレイも120Hzのリフレッシュレートに対応し、スクロールのガタつきを抑えた。実機に触れてみると分かるが、エントリーモデルとは思えないほど、操作感は向上している。
子どもや法人など、幅広いユーザーが利用するエントリーモデルなだけに、耐久性を上げているのも評価できるポイントといえる。同機は、MIL規格に準拠しており、1.22mの高さからコンクリートに落下させる試験もクリアしている。防水・防塵(じん)の保護等級はIPX9に上がっており、高温、高圧での噴射にも耐えられるようになった。処理能力を底上げしつつ、耐久性も増したというわけだ。
シャープの通信事業本部長を務める中江優晃氏も、AQUOS wish5は「めちゃくちゃ強化している」としながら、「スクロール性能がエントリーモデルとは思えないぐらい滑らか。エントリーモデルで、カクつかない120HzのスクロールができるのはAQUOS wish5ぐらいではないか」と話す。Dimensity 6300はエントリー向けのプロセッサだが、「ディスプレイと中身の制御をがんばって実現した」(同)という。
また、子どもが防犯の用途で使えるよう、新たに「防犯アラート」機能に対応。スマホを強く振ると、大音量のアラームが鳴り、位置情報を保護者などに自動で共有できる。子ども向けの携帯電話などには引き出すことで動作する防犯ブザーが搭載されているが、それをセンサーとソフトウェアで実装したような機能だ。パーソナル通信事業部長を務める川井健氏は、「ファーストスマホとして買われるお客さまを考えて搭載した」とその目的を語る。
シャープは、2024年にAQUOSシリーズのラインアップをフルモデルチェンジしており、デザインにmiyake designの三宅一成氏を起用。人との関わりや空間との調和をテーマに、よりガジェット感を薄めた柔らかな外観を採用した。これは、同シリーズの裾野をより広くするためだ。AQUOS R10とAQUOS wish5でも、このデザインは踏襲している。
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