日本はストリームデータ技術の活用に後れ データ&AIの時代に追従できるか調査レポート

アジア太平洋地域におけるデータストリーミング技術の活用状況を調査したところ、日本においては全社的な活用において後れを取っていることが分かった。

» 2024年12月04日 09時00分 公開
[後藤大地, 原田美穂有限会社オングス]

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 データストリーミングプラットフォームを提供するConfluentがアジア太平洋地域(APAC)におけるデータストリーミング活用状況の調査レポートを発表した。

 同調査によると、日本はAPAC各国と比較してデータストリーミング技術の導入、標準化率が低いことが分かった。

日本企業におけるデータストリーミングの活用状況(出典:Confluent「2024年アジア太平洋地域におけるデータストリーミングの現状」)

日本企業は他のAPAC地域と比べてデータストリーミング技術の活用に後れ

 この調査は日本、オーストラリア、インド、インドネシア、シンガポールを含む、アジア太平洋地域(APAC)のITリーダーおよび上級職1424人を対象に実施された。日本からは251人が回答し、そのうち約90%が今年のIT投資においてデータストリーミング技術を戦略的または重要な優先事項として挙げている。

 データストリーミング技術とは、発生したデータをリアルタイムで他のシステムに連携する手法を指す。オープンソースソフトウェアの「Apache Kafka」が代表的なプロダクトだ。今回、調査を発表したConfluentは、Apache Kafkaをベースにエンタープライズシステム向けの機能を拡張し、フルマネージドの商用のデータストリーミングプラットフォーム「Confluent」を提供する。

 通常、システム間のデータ連携は定期的なバッチ処理などでまとめてデータを転送する。データ転送にあたっては、連携対象システム向けに抽出したデータを変換してから送信する手法をとることが多く、「Extract(抽出)→Transform(変換)→Load(格納)」の順で処理することから「ETL」と呼ばれる。

 一方、大量のトランザクションが発生する金融取引などのシステムや、大量のデータが発生するIoTやWebシステムのログデータのように連続的に発生するデータをリアルタイムで処理するには、発生したデータをリアルタイムでロードした後に変換するELT型のデータ連携のアプローチが適している。この仕組みを実現するのがデータストリーミングだ。素早く現状を把握してビジネス判断のスピードを速める目的で使われることが多く、近年は専門的なシステムだけでなく、例えば「SAP S/4HANA」のデータをデータクラウドに送って分析するような、一般的なビジネスアプリケーションのトランザクションの即時把握にも使われる。

 今回、Confluentが発表したレポートによると、日本企業において、全社的に特定のデータストリーミング技術やプラットフォームでデータ処理を標準化している組織は10社中4社で、アジア太平洋地域の平均を下回っていた。ただし、36%はアプリケーションやユースケース間で再利用できるようにデータストリームを設計しており、26%はデータストリームを「プロダクト」として管理している。

 同レポートではこの結果について、「導入が遅れているとはいえ、日本企業が品質と戦略的な導入に重点を置いていることを示唆」していると分析している。

 近年、多くの企業にとって生成AIの活用は最重要課題となっている。しかしながら、AIに適切な結果を生成させるには、信頼性の高いデータを適切なフォーマットで、可能な限りリアルタイムに取得させる必要がある。この課題の克服に、データストリーミング技術が重要な要素となる。

 データストリーミング技術は、ビジネスを支えるシステムからのリアルタイムデータの継続的な送出を可能にし、信頼性が高く、コンテキストに沿ったデータを検索拡張生成(RAG)対応のワークロードに提供することができる。また、AIアプリケーション用のベクトルデータベース*利用できるように、データを効率的かつ適切な形式に変換できる。

*ベクトルデータベース:さまざまな種類のデータに対してコンテクストに応じたベクトル情報を付与して格納するデータベース。構造化データを扱うリレーショナルデータベースとは異なるインデックス構造を持つ。



 この調査結果について、Confluent Japanのカントリーマネージャーを務める石井晃一氏は、多くの企業においてデータがさまざまなシステムやアプリケーションに分散しているため、「最も重要なビジネス資産を見つけ、利益を生み出すことが難しい状況」だとみている。その上で、システムやアプリケーションを直接接続するデータストリーミング技術を「ビジネスの中枢神経系」として機能させることで、「意思決定やビジネスプロセス、顧客体験の改善のためにリアルタイムデータに簡単にアクセスできるようになる」としており、Confluent Japanは「日本企業が品質重視のアプローチを維持しながらグローバルな競争において他社に遅れを取らないよう、導入を支援する」としている。

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